子どもの「分かった」の意味

この子分かってないのかな…。

返却された子どものテストを見てみると、思いの外バツだらけ…。

思わず「あなたちゃんと学校の授業理解しているの?」と責め口調で聞いてしまう。

子どもは子どもで「授業、聞いているし、分かっている。」と返してくる。

いったいどうしたら良いのだろう、と途方に暮れることがあるかも知れません。

親からしたら、「この子、勉強が全然分かってないのかも…。」と不安を抱くこともあると思いますが、子どもが勉強を「分かった」、「分かっている」というセリフの真の意味を考える必要があるときがあります。

 

大人の「分かった」と違います

例えば、先週学校で分数の割り算を習ったとします。

子どもは先生の話を聞いて、「そうか、掛け算に直して、次に割る数を逆数にすれば良いんだ。」と覚えます。

この時点で子どもは「分かった」「理解した」と思います。

さて、授業で先生の話を理解したことで、子どもは「ここは分かった」と判断します。

そして「分かった」と判断した時点で、子どもはその単元を「卒業」したつもりになりがちです。

そして、子どもは卒業した単元を学習(復習)する必要はない、と考えます。

当然のことですが、時間が経つと学習した内容は忘れます(この点については改めてお話させてください)。

忘れた頃に「卒業」した内容を聞かれても、解けるはずはありません。

 

「分かった」=「今も解ける」ではありません。

子どもの「分かっている」・「理解している」は、学習した当時「分かっていた」・「理解していた」ことを指していることが大半です。今現在、その内容を覚えているかどうかを指してはいません。

お母さんたちには、溢れる不安をぐっと堪えて、

「思い出せる?」

「解き方、忘れちゃったみたいだね。忘れたままだともったいないから、もう一度覚え直してみようよ。」

という姿勢をキープして頂きたいです。

学習当時は理解していた、という子どものプライド(逃げ道)を残してあげた上で、忘れた内容を思い出させる作業をさせてあげて下さい。

人は必ず「忘れ」ます。これを踏まえて子どもに接してあげるだけでお母さんの気持ちも随分と変わってくると思います。

「分かった」は「そのときは分かっていた」です

お母さんとの懇談でも、この話はよく聞いて頂きます。

ほぼ全てのお母さんが「そういうことだったのね。」と仰います。

「やっと、あの子の言っていることが分かりました。」とお話しして下さるお母さんもいます。

この認識、私はとても大切だと思っています。

特に小学生を相手にしているとき、この現象(?)を理解していないと、大人はとんでもない勘違いをしてしまいます。

「分かった」という言葉の定義がずれているのですから、大人と子供との間で会話が成立するはずがありません。

道のりは険しいですが、私たち大人は、

① 子どものプライドを潰さないまま、「分かった」「理解した」という言葉の意味を子どもにわからせないといけません。

次に、

② 忘れてしまった知識を、もう一度子どもに覚えさせないといけません。

 

もちろん、お母さん一人では大変だと思います。

そんなときのために私たち塾教師がいるのです。

ご家庭で、「あ、この子はこの単元完全に忘れちゃっているわ。」とお感じになられたら、塾に連絡してください。

私たちが、即座に子どもの記憶を呼び戻すことはできないにしても、子どもにしっかりと話しかけて、「もう一度練習しないといけないんだな。」ということを実感してもらうよう働きかけることはできます。

そして、少し時間がかかるとは思いますが、「分かった、と思うことであっても、時間が経てば忘れるんだ。」ということを子どもに実感してもらえると、その子は「分かった」という言葉の意味とその難しさを自分なりにでも理解できるようになると思います。

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