こんにちは、149teacherです。
今日は、ある子どものエピソードを紹介させてください。
学校でスマホで記念写真
1学期の実技科目が終了していない生徒に対して、夏休み期間中に補講がありました。対象者は学年の8割以上。
その対象者の中の女子生徒の中の数名が帰り際に一緒にスマホで皆の写真を撮ろう!という話になりました。
もちろん、校則でスマホを学校に持ち込むことは禁止されています。
ところが、その中の1人の女子生徒がこそっと学校にスマホを持ってきていたので、それを使おうという話になりました。
当然ですが、目立つ場所で写真を撮ることはできませんから、彼女たちは「どこで撮ろうか?」と考えました。
結論として、女子トイレの中。
総勢5人の女子生徒の中には、「やっぱり良くないよ、やめようよ。」という声を上げる子どももいたのですが、
「ここだったら大丈夫だって、先生がトイレに入ってくることはないよ。」と返す子もいて、結局は「チーズ!」
ところが、たまたま女子トイレの近くを歩いていた保健体育のレッド先生が、トイレからヤケにキャッキャという声が聞こえてくることを不審に思って、トイレに突入しました。
トイレの中をのぞいてみると、
女子生徒が5名、スマホで写真を撮っている姿を現認。
見つかっちゃった!
「しまった」と、青ざめる表情を見せる女子生徒たちを見ながら、レッド先生は
「君たちがしていることは校則に違反してるよね。」
「後で、一人ひとりのご家庭にも連絡を入れるからね。」
と、お話しして、一通り女子生徒たちは怒られました。
女子生徒の1人は帰宅するなり、涙ながらにお父さんとお母さんに事の顛末を話し、謝りました。
「ごめんなさい、もうすぐ、学校から電話がかかってくると思う。」
お母さんは、「どうしてそういう流れに乗ってしまったの!あなたはそういう誘惑から逃れることができると思っていたのに。夏休みだからと言って、気持ちが緩んでいたんじゃないの!」と厳しく娘を責めます。
当たり前です。ルールを破ったのですから。
お父さんは、「分かった、すぐに学校に電話をしてお父さんからも謝るようにする。」と言って、即座に学校に電話をかけました。
娘たちのルール違反を発見したレッド先生に電話を取り次いでもらい、お父さんは一通りお詫びしました。
お詫びの電話
「禁止されていることを娘がしてしまい申し訳ありません。今、家内がしっかりと娘をっています。本人もボロボロ泣きながら、自分のしたことを謝っています。」
「今後、こういうことを繰り返さないように、また、同じような誘惑があったときに、周囲の友人たちを説得して、そのようなことをしないように声を上げる勇気を持つよう、家族で話をし、親として指導していきます。」
レッド先生「ご本人が反省されておられるのであれば大丈夫です。私たちも、今後は娘さんがお父さんの言うような行動に出て下さることを期待いたします。」
「2学期が始まりましたら、担任の教師から改めて指導が入ると思いますので、そのおつもりでいて下さい。」
父「かしこまりました。先生、お手間を取らせて大変申し訳ござませんでした。」
レッド先生「いえいえ、こちらこそわざわざお電話を頂きまして有難うございます。これからも、よろしくお願いいたします。」
この後、両親は、娘の気の緩みについて娘をしっかりとりました。
特に母は同姓ということもあってか、厳しく娘を叱りつけました。
娘は泣き続けています。大好きなお母さんにしこたま怒られているのですから。
仕方がありません。「ルールはルール」なんです。守らなくてはなりません。
担任の先生にお詫び
夏休みの終盤、この出来事とは別件でお母さんが学校に行く用意がありました。
お母さんは娘の県がとても気になっていたので、学校に着くや担任のブルー先生を探しました。
そして、ブルー先生を発見。
母「先生、先日は娘が大変申し訳ございませんでした。ご迷惑をおかけしました。」
ブルー先生「あ、あのことですね。でも、私はその場面を見ていないので何とも言えません。」
母「2学期が始まったら、相談室に呼ばれて一通り注意されると思いますが、家でもしっかりと言い聞かせましたので。」
ブルー先生「あっ、相談室には呼ばないと思います。反省されていたらそれで思いますよ。十分です」
2学期が始まりました
始業式の次の日、女子生徒は担任の先生にこう言われました。
「今日の放課後、相談室に行って下さい。学年主任のイエロー先生からお話があるそうです。」
女子生徒の頭の中は混乱しました。
「写真の件だろうな。でも担任のブルー先生はこれ以上大事にしないってお母さんに言っていたって聞いたんだけど…。」
そのブルー先生はホームルームが終わるとさっさと顧問をしている部活動を指導に行かれました。
そして、相談室
女子生徒がノックをして部屋に入ります。他の4人も一緒です。
学年主任のイエロー先生が待ち構えていました。
以下、イエロー先生のお話しです。
「先日のトイレ内での写真撮影の件、あなたたちは本当に反省しているのですか?」
「ここにいる生徒の中の何人かは保護者からお詫びの電話がありました。」
「でも、あなたたちは、謝るべき人にまだ謝っていないのではないですか?」
「まずはあなたたちを見つけたレッド先生に謝るべきではないのですか?」
「親が謝るのではなく、あなたたちが直接謝るべきではないのですか?」
「あなたたちは先生たちの期待を裏切りました。評価としてはマイナスです。期待していたのに残念です。」
「これからは、マイナスを少しでもゼロに近づけられるように努力しなさい。」
レッド先生に謝らなくては!
この話を聞いた女子生徒は、一刻も早くレッド先生に謝らなくては、と考えました。
ところが、学年主任のイエロー先生は、
「あなたたちが揃ってレッド先生に謝りに行くことは良くない。誠意が感じられない。」
「一人ずつ、別々に謝りに行きなさい。」
と仰ります。
女子生徒たちの混乱はここで極限を迎えます。
職員室の前に列を作って、前の子が出てきたら次の子が職員室に入るようにするべきなのか…?
結局、何人かグループになって、職員室に入り、」レッド先生の」前に行ってこう謝りました
「先生、余計な仕事を増やして申し訳ありませんでした。今後、注意します。」
どうすれば解決なのか分からない
恐らく学年主任のイエロー先生は、レッド先生に手間を取らせたことについて、子どもたちに謝罪をしろと言っていたのでしょう。
でも、その謝罪は、先の電話でお父さんがとっくにしています。保護者なのですから。
保護者である父親が電話であるにせよ、直接謝罪している以上、ここから先は家庭で処理すべきことで良いのではないかと思います。
ところが、学年主任のイエロー先生は、改めて娘にレッド先生に「直接謝れ」と仰りました。
娘は先生の真意が分からないながらも、
レッド先生に「申し訳ありませんでした。」とお詫びに行きます
もちろん、直接謝る必要はあるとは思います。
でも、もやもやするんです。
誰に対して、何に対して謝ったらゆるされるのか?
女子生徒の行ったことは非難されるべきことですので、学校(先生)に謝罪をすることはやぶさかではありません。
ただ、これについては、
-
- 誰に対して謝ったら「謝った」ことになるのか
-
- 何について謝ったら許してもらえるのか
があまりにもあいまいなのです。
女子生徒の校則違反については、「違反をして申し訳ありません。」と謝罪するのは、極論すれば学校の教師の誰でも良いはずです。
担任とか、学年主任とか、一々気にする必要はなく、学校教育を管理している誰かに伝えればよいのではないかと感じます。
もちろん、人として、担任に一言謝るなどと言ったことは必要かもしれませんが、それも必須であるとは思いません。
学校の「先生」を構成している誰かに伝えれば、それは「学校全体」に対して伝えていることになるはずです。
ですから、このケースで言えば、子どもを追い詰めて、レッド先生に謝るように強要することに強烈な違和感を感じます。
その理由が、
「何に対して謝罪するのか」
子どもが校則に反した光景を目にする。
それに対して指導をする。
これは中学校教師の「業務」の中に含まれているはずです。
まだ年端も行かない子どもたちが、時にはルールを逸脱する。
それに対して適切な指導を与えることは中学の先生の業務ですよね。しかも重要な。
「校則違反をしておいて、都合の良いことを言うな!」
というご意見があることは重々承知していますが、
生徒指導をしなければならなくなった先生に対して、子どもがお詫びをしなければならない。
しかも、そのお詫びの内容が「余計なお手間を取らせて、申し訳ありませんでした。」
という内容で謝罪しなければならないというのはやはり腑に落ちません。
「謝らなくてはならないのは、その点ではないのではないか?」ということです。
謝る必要があるときに、子どもがちゃんと謝ることは大切な教育の一環です。
ただ、謝る相手や謝る内容にあいまいさがあった場合、子どもは心から納得して「謝る」という行動に出ることができないかもしれません。
または、「とにかく誰に対しても『ごめんなさい、ごめんなさい』って謝ればいいんでしょ。」
と歪んだ経験を身につけてしまうかも知れません。
学校の先生のお気持ちも分からなくはないですが、
やはり胸の中がもやもやするエピソードです。