そんな過激な言葉…
子どもの言葉遣いにドキッとさせられることが少なくありません。
やはり一番びっくりするのが過激な言葉です。
こういう場所で文字に起こすと問題があるかもしれませんが、「●ね」、「●すぞ」(すみません。過激すぎて文字にできません)、といった言葉を友達に投げかける子は一定数います。
もちろん、本気ではないんです。
関西人的なノリの部分で言っていることも多いと感じられます。
そして、多くの場合は言われた側の子も笑って流しているように受け止めているようです。
私はそのような場面に出くわすと困ってしまいます。
例え悪意のない、シャレのような使い方であっても、言葉を正しく使えないことは悲しく残念なことだと考えてしまうのです。
この記事を読み始めて下さった方は、「●ね」というような言葉を安易に使うな、言われた人がどれほど傷つくか考えてみろ、という内容だとお思いになられたかと思います。
もちろん、私は人の命を軽んじるような言葉を安易に使うことは大反対です。
ただ、今日は別の視点でお話したいと思っています
言葉の力
私は言葉を正しく使う力を子どもに持たせてあげたいと思っています。
例えば「グロい」。よく子どもたちはこの言葉を使います。
例えば、私が普段より多めの宿題を子どもたちに課すと「うわぁ、グロい!」などと口にする子がいます。
おそらく彼らにとっては「ひどい!」「あり得ない!」といった意味合いで使っているのだと思います。
当たり前ですが、「グロい」は「グロテスク」から派生した言葉で「奇妙」とか「奇怪」というニュアンスを持っている言葉です。
私なりの解釈を加えると「生理的に不快感や不調和を感じる対象」かと思っています。
そうすると、私の感覚からすると、今日の宿題は「生理的に不快で、奇妙なもの」になってしまいます。
もちろん、子どもたちにそんな気持ちはありません。「先生、勘弁してよ」という意味で使っているのです。
安易な言葉に逃げない練習
ここで私は「グロい」の語源を含めて話をします。
真面目に正面から突っ込んでも子どもたちの心には伝わりにくいですから、こんなたとえ話をします。
『君が大人になってお金を結構稼いだとしよう。ある日、ふと車を買いたいなと思った。
そこで自動車のディーラーAとBにそれぞれ訪問してみた。
Aの担当者は「お客さん、このXというわが社の車ですが、メッチャ人気があるんですよ。メッチャ運転しやすくて、小回りもきくんです。色もどうですか?黒っぽく見えますけれど角度を変えたら少し変わるでしょ?これがメッチャ受けてるんです。値段の割にメッチャ燃費もいいし、座る心地もメチャ快適ですよ。」
(自動車販売に携わられている皆さん。本当に申し訳ありません。皆さんの業界にこのような方がいるとは決して思っておりません。ただ、子どもたちがイメージしやすい商品ということを考え、自動車を例にとりました。)
他方、B社は「お客様、こちらの車は弊社の最新型のモデルでございます。有難いことに大変ご好評いただいておりまして、少々納期にお時間を頂戴するのですが、先にご購入いただいたお客様からは取り回しの快適さをご評価いただいております。ボディカラーにつきましても弊社独自の技術を用いまして、ご覧いただく角度によって色目が異なるようになっておりまして、オーナー様からは大変良い評価を頂戴しております。燃費に関しましても、このクラス最高レベルの性能を有しておりますし、車内の居住性能もこのクラスの車以上のものを備えております。」
はい、君はどっちから買いたい?
A社は君のことをバカにしているように感じませんか?
でもね、Aの人も一生懸命なんだよ。
ただ、悲しいけれど言葉が足りなくて上手にアピールできていないんだよ。
言葉を沢山覚えて、正しく使うことは自分の武器になるんだよ。
君たちも本当に「グロい」と思ったら、そういえば良い。でも何となく使っているのならもったいないよ。』
で、「●ね」、「●すぞ」です。
普段からこういった言葉を比較的よく使う子がいます。
彼(彼女)が言うたびに、私は少し冗談めかして「アカン、アカン!死んだらダメよ!」「殺すなんてできないし、やったら本当にシャレにならないよぉ!」と教室の空気を濁らないようにしながら、それでもこういう言葉は使うものではない、という雰囲気を作ります。
正面切って子どもに「なんでそんな言葉を使うんだ!ダメじゃないか!言われた人の気持ちを考えろ!」と言ったところで、本人には全く伝わりません。だって、本当に殺してやろうなんて思っている訳ないのですから。
私としては、その場に居合わせた子どもたちが「そうなんだ、そういう厳しい言葉なんだ」と感じてくれれば良いのです。
心の中で汗をダラダラかきながら子供たちに自分の気持ちを伝えます。
そういうことか…
その後、保護者懇談の時期になって、件の子どものお母さんと懇談しました。
お母さん:「いやあ、あのね、先生。うちの子本当に家で勉強しないし、全然やる気もないから、この間も『お前なんか死んでしまえ!』って言ってやったんです。」
「そんなやる気のない子ですから、先生からもしっかり注意してやってください。」
お母さんが、言葉の重さを考えていなかったのですね。
そりゃあ、子どもはお母さんの言葉遣いを真似しますよ。何か、自分の心の中では「そうだったのか」と腑に落ちる瞬間でした。
お母さん、言葉は遺伝します。私も3人の子どもの父親として、日々緊張しています。
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